複雑で難解「USB規格と名称」
こんにちは。daikanyama digital imaging(ddi)です。
今回はUSBケーブルについてのお話です。
USBケーブルについてまとめてみようと思ったきっかけですが、私の所属するddiは、代官山スタジオにおいて主にデジタル機材周り(カメラ・モニタ・PC等)を担当しています。そのためお客様から「このカメラとパソコンを繋ぐケーブルを借りたい」というご連絡をいただくことがあります。
その際、弊社に対応するケーブルがあるのか確認するために、まずはカメラの説明書を調べます。ただ、説明書を調べる際に度々遭遇する問題があります。
それは
『SuperSpeedUSB表記』と『USB3.◯ Gen◯表記』です。
「USB3.◯ Gen◯表記」で例をあげるとすれば、「USB3.2 Gen2」のような規格のことです。
カメラの説明書は「USB3.◯ Gen◯」表記より「SuperSpeedUSB」系列で表記されていることが多いです。しかしUSBケーブルは、「USB3.○ Gen◯」や「5Gbpsデータ転送」のような表記をされていることが多く、その表記の差によって「SuperSpeedUSBだから5Gbpsでしょ、つまりUSB3.何だ…?」となることがよくあるんです。
そのため今回のコラムは、私と同じようにこの問題に出くわす方がいるのであればその方のお力に、さらには皆様が所有するカメラのテザー用ケーブル探しのヒントになれたらと思いまとめてみようと思います!
まずはUSBの規格と表記、転送速度などをまとめた下の表をご覧ください。
※この表に記載されているものは代表的な表記のものなので、全てではありません。
2024年現在、カメラ周りの機器で広く使われているのは「USB3.2 Gen1」、「USB3.2 Gen2」規格のケーブルではないかと思います。テザー用のケーブルを調べたことがある方でしたら、この「USB3.2 Gen1」「USB3.2 Gen2」という文字を見たことがあるのではないでしょうか。
これだけでもなんだか目がチカチカしませんか?さらに、ほぼ間違い探しレベルの「USB3.1 Gen1」や「USB3.1 Gen2」もインターネット上に混在しています。正直なところ、私はよく混乱してしまいます。。
また、上記の表の備考欄ですが、カメラやカメラ周辺機器において使用されることの多い名称です。USB3.2 Gen1は「SuperSpeedUSB」、USB3.2 Gen2は「SuperSpeedPlus USB」と表記されることがあります。そこでカメラメーカの説明書にはどう表記されているのか調査してみました。
カメラの説明書に表記されているUSB規格です。以下の図をご覧ください。
▼Canon
Canon製品の説明書には「SuperSpeed Plus USB」と「USB3.○ Gen〜」の表記があります。
▼Nikon
Nikon製品の説明書の表記です。D850では「SuperSpeed USB」に「USB3.0 MicroB端子」という表記がありますが、Z8は「SuperSpeedUSB」のみとなっています。つまり「USB3.2 Gen1」となります。
▼FUJIFILM
※弊社所有機種+Type-C搭載機種の一覧です。
FUJIFILM製品の説明書です。GFX100とGFX50sⅡは「USB3.2 Gen1x1」、GFX100Ⅱは「USB Type-C®︎USB10Gbps」と表記されています。「USB Type-C®︎USB10Gbps」は「USB3.2 Gen2」に該当すると考えてよいでしょう。
ここまでの内容を踏まえて「Super Speed USB」と「Super Speed Plus USB」について簡単にまとめると以下のようになります。
「=」になっているものはすべて同じ規格と考えてOKだと思います。「USB3.◯ Gen◯」表記のケーブルも、単に時代とともに名前が変わっただけであり、最大転送速度は変わりません。
ちなみに、USBケーブルの転送速度を判断するには「USB3.◯」のことは気にせず
「Gen1は5Gbps」「Gen2は10Gbps」と覚えておくことを、「今のところは」おすすめ致します。
ちなみに「Gbps」という単位はGiga bit per second(ギガビットパーセコンド)を略したもので、1秒当たりのデータ転送容量を表しています。例えば「5Gbps」は1秒間に約5GBのデータの転送が可能ということになります。
※あくまでも理論上の速度のお話です
余談ですが「Gen1」や「Gen2」の後に「x2」などの表記がされているものがありますよね。これはデータ転送の「レーン数」を示しています。例えば、USB3.2 Gen2x2は「Gen2」なので「10Gbps」、その10Gbpsのレーンが「x2」あるということは『10Gbps(Gen2) x 2 =20Gbps』。最大転送速度20Gbpsのケーブルということになります。
ただ、注意点ですが、転送速度の速いケーブルを使用しているからといって、必ず最大転送速度で使用できるわけではありません。カメラ本体のスペックや接続するパソコンのスペックなど、さまざまな条件が揃った時に「転送速度は速くなる」のです。
基本的にUSBケーブルは「下位互換」なので、ポートの形状が同じであれば、規格(転送速度)が違っても使用できるように作られています。つまり、「5Gbpsのポートに10Gbpsのケーブルを挿して使うことができる」ということです。ただし、その時の転送速度は10Gbpsのケーブルを使用していても、「5Gbps」になります。
つまり『どれだけ転送の速いケーブルを使って撮影していても、そのケーブルを繋ぐ機器(PC・カメラ・変換など)の転送速度が遅ければ、接続している機器の中で、最も転送速度の遅いものに依存してしまう』ということです。
せっかく転送速度の速いケーブルを使用するのであれば、最大限の力を発揮してほしいですよね。皆様が今使用しているケーブルはいかがでしょうか?最大限の力を発揮してくれていますか?このコラムを読んでいただいた後、確認してみてはいかがでしょうか。
またまた余談ですが、最新のUSB4では「Gen」ではなく「version」という新たな名称も登場し、さらに複雑な状況になっているようです。この複雑化した状況を踏まえて、2022年9月にUSB規格をとりまとめるUSB-IFが一般ユーザー向けに転送速度をベースにした名称に統一するガイドラインを公開しました。
- ◯USB2.0 ▶︎ 変更なし
- ◯USB 3.2 Gen1 ▶︎ USB 5Gbps
- ◯USB 3.2 Gen2 ▶︎ USB 10Gbps
- ◯USB 3.2 Gen 2×2 ▶︎ USB 20Gbps
- ◯USB4 Version 1.0 ▶︎ USB 40Gbps
カメラの仕様書への反映はまだ行われているものが少ないですが、ケーブルメーカーでは徐々に始まっているようです。転送速度をベースにしているので一目でわかりますね。。わかりやすいありがたい。。
ちなみに
これがFUJIFILM GFX100Ⅱの説明書です。すでに転送速度ベースで表記されています。
このガイドラインが浸透することで、ごちゃごちゃしていたUSB規格が分かりやすくなり、ケーブル選択がスムーズになる日が来ることを願いながら待つことにします。
ご覧いただきありがとうございました!daikanyama digital imagingでした。